はじめよう!環境経営(その1)

はじめに

本コラムは脱炭素化社会へ向け、中小企業の企業価値を高め、売上・利益の向上つながる環境への取組みを本業へ取り込む経営手法について記載します。

最近、カーボンニュートラル、脱炭素化社会、気候変動等、環境に関するニュースを耳にしない日がありません。直近では令和4年1月17日の第二百八回国会における岸田総理の施政方針演説の「気候変動問題への対応」のパートで「経済社会全体の大変革」と言及されました。大企業は、これらの時流を捉え、環境への取組みを経営に取り込み、情報発信等により戦略的にビジネスを展開しています。

本コラムでいう「環境経営」は、「見える化」をキーワードに、「事業活動に伴う資源・エネルギー消費の抑制、環境に配慮した製品・サービスの提供など、環境への取組みを経営に取り込み、戦略的に事業を継続的・計画的に遂行すること。」と定義し、具体的な方策を3回に分けてご紹介していきます。

  • 第一回 1.既に環境経営していませんか?
  • 第二回 2.環境負荷の見える化
    • 2.1記録する
    • 2.2指標を立てて日々改善
  • 第三回 3.発信しましょう!
    • 3.1評判、信頼、関係という資本
    • 3.2重要なビジネス戦略として

1.既に環境経営していませんか?

少し古いデータですが、日本商工会議所が行った「中小企業における地球温暖化対策(省エネ対策等)の取組みに関する調査:H28年9月~11月、回答企業801社」によると、617/801社(複数回答)が何かしらの地球温暖化対策を実施しています(下表)。

実施が高い「不要な照明の消灯や間引き」は、電気使用量を最低限におさえて電気代(コスト)を削減する取組み。「省エネを考慮した空調・温度管理」もエネルギー使用量を最低限におさえて電気代、ガス代、灯油代など(コスト)を削減する取組みです。いずれも地球温暖化対策という環境への配慮と同時にコストを削減する取組みです。これらは事業活動に伴う資源・エネルギー消費の抑制を活動方針・目標にあげて取組む環境経営と言えます。

出典: 日本商工会議所をもとに筆者作成

ここで、電気代削減と環境問題とのつながりを製造業の生産ラインを例に考えます。

生産活動と環境との関係(筆者作成)

「発電の仕組み」の青枠から青矢印を順にみてください。電気をつくる時、「環境の側面」に記載のとおり二酸化炭素が排出されます。「自社生産活動」においてはその電気を購入し生産・製造しています。つまり、生産・製造には二酸化炭素の排出が伴うことになります。

次に「自社生産活動」の緑枠を緑矢印の順にみてください。生産改善活動により、効率的な生産を行うと、同じ電気量で生産量を上げるもしくは電気使用量を削減して同じ生産量を実現できるので、電気使用率が向上し、購入する電気が少なくなります。これは「発電の仕組み」の発電量を少なくし、「環境の側面」の二酸化炭素排出量を削減したことになると考えるのです。つまり効率的な生産は二酸化炭素排出量を削減していることになります。

生産・製造と二酸化炭素排出の関係がイメージできたでしょうか。生産効率を上げてコスト削減することは、環境対策をしっかりやっているということなのです。上記は製造業を例に挙げましたが、自社事業の効率を図る改善活動に置き換えて考えてみてください。先に紹介した「不要な照明の消灯や間引き」の取組みも上図の改善活動に該当し二酸化炭素排出量削減につながります。

コストを削減して利益を確保すると同時に環境へ配慮した取組み、これこそ環境経営の基本で、既に実施されているのではないでしょうか。

著者紹介

安達功(あだちいさお)

大手エンジニアリング会社でエネルギー関連プラントの設計・調達・工事のプロジェクトマネジメント業務に従事。変化の激しい時代を生き抜くために「難しく考えがちなことを易しくかみ砕き、易しくかみ砕いたことをさらに一歩踏み込んで深く捉えて経営に」をモットーに経営者ととも考えていきます。

経歴

  • 1995年    大手エンジニアリング会社勤務
  • 2021年 中小企業診断士登録

保有資格

  • 技術経営修士(MOT)
  • エコアクション21審査員補
  • 一級管工事施工管理技士
  • 一級電気工事施工管理技士
  • 一級建築施工管理技士
  • 消防設備士甲種1類、2類、3類、4類、5類、乙種6類、7類

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