はじめよう!環境経営(その2)

前回の第一回では環境経営の概要をお伝えしました。第二回では、環境負荷の見える化についてお話しいたします。

2.環境負荷の見える化

環境へ配慮する項目(以下、環境負荷という)には次のものがあります。環境省が策定した日本独自の環境マネジメントシステムであるエコアクション21(以下、ea21という)に規定されている項目です。

  • 二酸化炭素排出量
  • 廃棄物排出量
  • 水使用量
  • 化学物質使用量

では、これら環境負荷低減のために自社で実施している環境経営はどの程度なのでしょう。

筆者が最近訪問した製造業(従業員7名、金属加工業)の社長様は「環境は大切だ!周辺地域への環境配慮のために、〇〇〇はちゃんとやっている。□□□もちゃんとやっている。燃料だって無駄にはせず○○に再利用している。」と言い、周辺地域から苦情はないとのことでした。素晴らしいことなのですが、残念ながら、その取組みの記録がなく定量的な評価ができません。

以下、自社事業の環境負荷の「見える化」の手順を紹介します。

2.1記録する

まずは、環境負荷4項目に対して支払っている費用と使用量を記録します。二酸化炭素排出量は、電気代、ガス代、灯油代などの請求書記載の使用量にCO2排出係数を適用すると換算できます。廃棄物排出量、水使用量、化学物質使用量についても請求書などに記載の費用と使用量を記録します。

可能であれば、これら環境負荷項目を月単位に管理台帳などで経営者もしくは環境管理責任者が管理することをお勧めします。自社事業の改善活動など自助努力の効果をより実感するためです。

※環境省ホームページ、ea21ホームページなどで公開されています。

2.2指標を立てて日々改善

次は自社事業の改善活動の見える化です。

環境負荷4項目に対して指標を立て改善活動を行い、それら削減量を把握・評価します。毎月データを入力していれば、数値が改善活動の成果で実績値として明確になります。そして、指標と実績値の差異を評価し次の改善活動に展開していきます。

自助努力が、削減したコストと環境負荷で見える化され、決算時には利益額増として反映されます。

ここで、環境負荷項目のうち、どの業種にも当てはまる廃棄物排出量の削減について簡単に触れます。イメージ図も併せてご参照いただき、日々の改善活動や指標の立て方の一助とされてください。

事業を継続的に行うと、必ず廃棄物(一般廃棄物と産業廃棄物の両方もしくはどちらか。業種によります)が生じ、処理するにはコストがかかります。このコストを削減するには、廃棄物抑制を念頭に事業活動を行い、必要以上に主資材(原材料)、副資材(事務用品、備品、消耗品など)を調達しない、調達した主・副資材を無駄にしない、可能であれば再利用する、などが考えらえます。廃棄物を抑制するばかりでなく、資源の消費抑制へつながる環境への取組みにもなります。

どの業種にも共通する廃棄物抑制の事例として、取引先・消費者に製品・商品を納入する際、過剰な梱包・包装を控える取組みがあります。何かモノを作る・加工する・建設する事業であれば、不良品(不適合品)を作らないことで、資材を無駄にせず、無駄なエネルギーを使用しないことにもつながり、同時に品質向上の取組みにもなります。什器備品・機械設備などを適切に手入れして長期間使用することも廃棄物抑制につながります。

また排出にあたり、適正な分別はリサイクル率をあげ、廃棄物削減につながり環境汚染防止の観点から有効です。循環型社会の形成を担うことになり、環境負荷を低減する取組みとなります。

廃棄物排出量削減方法は多岐にわたりますので、自社事業の方針・目標に合わせて指標を設定されてください。なお、産業廃棄物は保管されているマニフェストから排出量が分かりますので、データとして管理されてください。

廃棄物削減の取組み事例(筆者作成)

「見える化」をキーワードに簡単に環境への取組みを触れましたが、本来であれば、方針を定め、目標を決め、実行計画を策定し、実行していきます。そしてPDCAサイクルを回しスパイラルアップしていきます。

全てを一気に行うことが困難であるなら、二酸化炭素排出量もしくは廃棄物排出量の把握に限定し、出来るところから環境経営をはじめれば良いと考えます。お手元にこれらの請求書があり、ネタはそろっています。あとは記録するだけです。

※参考図はea21で求めるスパイラルアップです。環境負荷4項目に加え「自らが生産・販売・提供する製品の環境性能の向上及びサービスの改善」も把握すべき項目となっています。

著者紹介

安達功(あだちいさお)

大手エンジニアリング会社でエネルギー関連プラントの設計・調達・工事のプロジェクトマネジメント業務に従事。変化の激しい時代を生き抜くために「難しく考えがちなことを易しくかみ砕き、易しくかみ砕いたことをさらに一歩踏み込んで深く捉えて経営に」をモットーに経営者ととも考えていきます。

経歴

  • 1995年    大手エンジニアリング会社勤務
  • 2021年 中小企業診断士登録

保有資格

  • 技術経営修士(MOT)
  • エコアクション21審査員補
  • 一級管工事施工管理技士
  • 一級電気工事施工管理技士
  • 一級建築施工管理技士
  • 消防設備士甲種1類、2類、3類、4類、5類、乙種6類、7類

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