事業再構築補助金における事業アイディアの具体例
~補助金チャレンジは難しくない!~その2

こんにちは神奈川中小企業診断士会の鈴木崇史です。前項では経営者の「やりたいこと」をどのようにして補助金獲得に必要な「事業計画」にまで進化させることができるかについて実事例をお伝えしました。事業計画は自社だけで練り上げるよりも専門家を交えてブラッシュアップすることが大切です。

さて本稿では「必要とされていること」から始める事業アイディアの作り方・具体化の事例をご紹介いたします。

お客様の必要とすることから考える

新サービス開発における一番のヒントは顧客の声です。顧客から「こんな商品・サービスないの?」と聞かれたら、それは貴重な財産です。日ごろから顧客の声を集めることが大切です。企業としてシステム化できていない場合でも小売店などであれば最前線の販売員が様々な顧客の声を思い出すかもしれません。その意見こそが前項で重要なポイントとお伝えした「誰に・何を・どのように・いくらで」の「なにを」に当たるものであり、意見を言った顧客こそが「誰に」にあたります。

私がご支援してきた中でもこの顧客の声・問い合わせをきっかけにしたスタートは多いように思います。

ひとつ、事例をご紹介します。

ある旋盤加工業の事業者様は旋盤加工とNC加工の双方を使いこなす技術者でした。ある時、顧客からの試作依頼の図面を見て、特殊な加工であり、汎用旋盤を使用するしかないものの、それでは加工時間がかなりかかることが想定され、受注は難しいと感じたそうです。その後、特殊な汎用旋盤を導入することで事業化できることが分かり、特殊加工に対する新たな製造方法の確立に成功されました。(特殊旋盤導入にて事業再構築補助金を活用)

これまでの顧客からの依頼でありながら、どうして新たな取組みと言えたのでしょうか?

実は今回の依頼の部品を使用した完成品は海底開発向けの測量機器でした。もちろん初めて挑戦する分野(新たな市場セグメント)です。納品先も作っている製品も一見同じですがユーザー業界が違うことで、全く異なる精度水準を求められます。本件の経営者はこれまで頼まれた図面通りに製品を作っていましたが、今回のことで最終製品が何に使われるかを考えるようになったと、自身の変化を述べていました。

新たな事業アイディアというと発想することがとても難しいように思います。しかし、顧客からこれまでとは内容の異なる相談を受けた際に、現状の設備・技術ではできないことであっても、なぜこのような製品が必要なのか、それは有望な分野なのかについて専門家とよく相談することが、新分野への挑戦の第一歩と言えます。

社会の必要とすることから考える

目の前の顧客の意見の中に新サービスの種が見つかることばかりではありません。その場合は世の中のニーズを探る必要があります。そのためには社会情勢を観察し続ける等の不断の努力が必要ですが、なかなか難しいのも事実です。

今日、世界的に社会として実現すべき将来の姿を17の分野で169のターゲットについてゴール(あるべき姿)が設定されています。それがSDGsです。SDGsの詳しい説明は省きますが、企業活動も将来のゴールに向けて活動することが求められており、企業のすべての利害関係者がその活動を評価する時代になっています。まずはこの169のターゲットとゴールに対して自社がどのように貢献できるかという視点から製品・サービスの開発を検討することは有効なアイデア発掘の手段となりえます。169のターゲットとゴールはアイデア発掘の宝庫と言えます。

SDGsの17の分野(和訳:総務省資料を参考)

①貧困 ②飢餓 ③保健 ④教育 ⑤ジェンダー ⑥水・衛生 ⑦エネルギー ⑧雇用 ⑨イノベーション ⑩不平等 ⑪都市 ⑫生産者責任 ⑬気候変動 ⑭海洋資源 ⑮陸上資源 ⑯平和 ⑰連帯

ひとつ、事例をご紹介します。

今回ご紹介する事業者様は和生菓子製造小売業の方です。フードロスの削減(SDGsの⑫に対応)をターゲットとして特殊形状の生菓子の個包装・脱酸素剤活用を行い、消費期限を延長させ、販売から消費までのロスの削減を目指しました。さらに、消費期限が延長されたことで、これまで本格的に行っていなかったEC販売に挑戦しました。(特殊形状に対応可能な特殊個包装機を神奈川県の補助金を活用して導入、事業再構築補助金は採択後に辞退)

※フードロスの問題は⑫つくる責任、つかう責任;持続可能な生産消費形態を確保する、の項目に該当します

何か新しいことをしたいがニーズが見つからない、という場合にはSDGsの17の分野、そしてそれを細分化した169のターゲットとゴールにアイデアを求めてください。SDGsに沿った開発が明確であれば、行政や金融機関の支援も得やすく、採用活動にも有利に働くことが期待されます。

まとめ

本シリーズでは成功する新たな取組とは(1)やりたいこと(2)できること(3)必要とされていることの3要素が必要であること、しかし初めから3つが揃っている必要はなく、(1)やりたいこと、(3)必要とされていることのどちらか一つがあれば、専門家とのディスカッションの中で新たな取組が具現化され事業再構築補助金の対象となるレベルの事業計画まで進化することを実事例をもとにお伝えいたしました。

自社のみで精度の高い計画を作る必要はありません。支援機関を巻き込んで新たな取組の種を育てましょう。

著者紹介

鈴木崇史

合同会社SDGs経営サポート

大志経営コンサルティング

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