Japan IT Week

はじめに

本コラムは、各業界ごとに現在のトレンドとなっているIT導入のテーマを紹介していくものです。近年、中小企業の経営に常に付きまとうIT改革ですが、業界の変革は早く追いつくことも容易ではありません。以下のテーマの中からご自身の会社に必要と思われるテーマについて調べていただき、よりよい経営環境の実現を目指していただきたいと思います。第3回は番外編として、日本最大のIT展示会、第13回 Japan IT Week 秋に参加したその内容をレポートします。

Japan IT Weekとは?

Japan IT WeekはRX Japan株式会社が開催する日本最大のIT展示会で、春と秋の2回、東京で行われます。また、大阪、名古屋でも開催をされています。
展示会は一定の広さのブースを借り、その中で自社の展示を行う形になっています。また、ブースは複数購入して広い展示スペースを取ることもできるため、展示会でのマーケティング活動に熱心な会社は多くのブースを購入し広い展示スペースを確保することが多く見られます。

また、2ブース以下の出展を行う企業はベンチャー企業であるか別業界からクラウド事業に参入したい企業がテストマーケティングとして利用することが典型的です。そのため、2ブース以下の小さいブースが多い展示会は様々な業界やベンチャーが集まってきている分野であると考えることができます。この知見を利用して、ITのどの分野が成長過程にあるかを確認することも可能です。

クラウド関連サービス事業の寡占化

今展示会を総括した表が右図となっています。


総ブース数が多い展示会は客が多く集まり、活発に営業活動が行われている展示会と考えることができます。事実、クラウド業務改革やデジタルマーケティングなど注目を浴びているテーマの展示会に企業が集中していることが読み取れます。しかし、ブース数上位2つの展示会は2ブース以下の小さな展示の割合が50%を切っており、新規のベンチャー企業や業界外からのテストマーケティングが他展示会と比較しても少ない傾向にあることが読み取れます。

上記の表を基に考えると、RPAによる業務の自動化、HPや動画を扱ったマーケティングは既に成長産業ではないと供給側は感じているように見えます。そのため、新規顧客のためのキャンペーンや新しい機能の開発などは徐々に減っていく見込みです。バックオフィスのシステムの導入を考えていらっしゃる方は早めの導入をお勧めいたします。
それに引き換え、IoT&5Gソリューションは大量の企業を集めながらも小ブースの企業も多く、これから成長が見込まれる分野だといえます。

IoT&5Gソリューション展には今回中国企業が合同で出展をするブースもありました。運動量を計測してくれる服や店舗の前の人の往来を計測する看板など、様々なアイデアが生まれてきています。新規事業戦略を考える際は、IoTを活かすことができないかを考慮に入れてみてください。

第13回Japan IT Week秋で新しく注目されたサービス

今回、第13回Japan IT Weekにおいて、これまでの展示会に比べて出展が拡大したものはオンライン会議の充実です。2020年に起きたCOVID-19により日本でも在宅勤務が拡大をし、それに付随してオンライン会議システムやビジネスチャットシステム市場が大きく拡大をいたしました。最も、現在のオンライン会議システムではユーザーは音声のみで会議を行うか、カメラを付けて実際の顔を表示させるかの二拓でした。

今回、Virtual Studio (Vtube) の技術を転用して実際のユーザーと同じように動きつつも自分が選んだアバターを表示させるシステムを取り扱うブースが拡大しました。また、透明のスクリーンに映像を表示させ、実際の会議室にいる人と在宅勤務の人があたかも同じ空間にいるように見えるサービスを展開しているブースも新たに設立されています。これらの設備により、ストレスなくリアルに近いコミュニケーションが取れるように配慮することもできるようになっています。

さらに、メタバースにより仮想空間上でオフィスを作り、あたかも人がそこにいるかのように見える空間を提供するサービスを考えている企業も現れています。2020年に「とりあえず」や「しょうがなく」といった理由で導入をされた在宅勤務制度やそれに付帯するサービスを導入された方も多いかと考えます。新しい働き方を早急に進めるために各サービスを比較検討する時間も限られていました。現在、慌てることなく各サービスを比較検討し、各企業にとって最適となるコミュニケーションツールの導入を考える最初のチャンスと見ることができます。

企業のシステムは、だいたい5年ごとに見直しや入れ替え検討をしないと最先端の技術から大きく遅れると言われています。2020年に導入が一気に拡大したオンライン会議システムやビジネスチャットシステムの見直しは2025年頃に最盛期を迎えます。新しい機能やキャンペーン、導入事例などがこれから3年かけて徐々に充実していくことが予想されます。ご自分の会社のコミュニケーションはどのように行っていきたいか、このブログを読んでいただいた機会にご一考いただけますと幸いです。

執筆者プロフィール

オープンテック合同会社 代表 湯淺正範

埼玉県出身、Brigham Young University Hawaii 国際政治学部卒。南アジアの在京大使館にて経理、基幹システム保守、領事関連の部署を歴任する。その後、外資系ITベンダーに転職し、基幹システムや人事システムの設計・構築・ユーザー教育など、一貫したシステム構築の現場を複数経験する。より自由な立場からユーザーに寄り添ったITシステム導入を進めるため2021年9月に独立、オープンテック合同会社代表社員を務める。

湯淺正範 



神奈川中小企業診断士会