事業再構築補助金採択のポイント(後編)

こんにちは神奈川中小企業診断士会の鈴木崇史と申します。前編に続き本稿では事業再構築補助金のどうすれば採択されるのかという点についてここだけは押さえていただきたい5つのポイントをお伝えいたします。

前編では私がこれまで事業者さんから質問を受けることの多い下記のような「誤った5つの認識」をご紹介しました。

後編ではそれと対比する形で「5つのポイント」を解説していきます。

誤った5つの認識

  1. 補助金をもらえるので儲ける必要はない
  2. 高度な事業計画が必要
  3. 最先端の機械の導入が必要
  4. ある程度の業歴や企業規模がなくてはいけない
  5. 採択率はコンサルタントの腕次第

ポイント1

誤① 補助金をもらえるので儲ける必要はない

正① 収益性が高い事業に挑戦し、企業の成長を目指す

補助金についての考え方・審査方針などは公募要領に記載されています。そこには以下の通り記載されています。

本事業は、(中略)規模の拡大等、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業等の挑戦を支援することで、日本経済の構造転換を促すことを目的とします。また、事業再構築を通じて事業規模を拡大し、中小企業者等から中堅・大企業等に成長することや、中堅企業等が海外展開を強化し市場の新規開拓を行うことで高い成長率を実現することは 特に重要であることから、本事業ではこれらを志向する企業をより一層強力に支援します。

多くの方がこれまでと同じようなビジネスをしていては生き残れないという危機感をお持ちかと思います。上記の公募要領の文章からも同様の危機感があることが読み取れます。自社の規模を拡大しなければ競争にも勝てませんし、従業員の待遇をよくすることもできません。成長するために思い切った新しい取組が必要であると認識している事業者様も多いことでしょう。この取組が成功したならば、高い収益性を実現し、企業は大きく成長することでしょう。

しかしながら、新しい取組に大きな投資が必要となると話は別です。成功する保証のない投資には慎重にならざるを得ません。しかしながら補助金が使えることで必要な投資額が1/4~1/2になれば、リスクを負うことも可能になります。これにより、新たな挑戦に踏みだすことも可能となります。その挑戦は高い収益性を持ち、企業の成長に寄与するものでなくてはなりません。

私がサポートしたお客様は採択発表の際に喜びの声より先に、「これからが本番ですね、頑張らなくてはいけませんね」と気を引き締めていらっしゃいました。

ポイント2

誤② 高度な事業計画が必要

正② 経営の基本に沿った、具体的な計画

題名を見て、不満に思われた方もいらっしゃるかもしれません。「経営の基本」なんて難しいことを言われても困ると怒られてしまいそうです。しかし、「経営の基本」の中身はしっかりと公募要領の審査項目欄に記載されています。

例えば

  • 価格的・性能的に優位性や収益性を有するか
  • 現在の自社の強みを活用すること

等です。実はどのような計画が採択されるかはすべて公募要領に書いてあります。

それなら、「優位性を有します」「強みを活用します」などと書けばいいのでしょうか? そうではありません。それではスカスカの内容になってしまします。ここで公募要領に出てくる「具体的に」というワード、そして裏付けとなる「なぜ?」が重要になります。

私がご支援した建材メーカー様のケースでは「新商品(厚板部材)で競合他社は施工現場からの距離が大きく運搬コストがかかること」、「既存の薄板部材と双方を扱えることで顧客の購買担当者に大きなメリットになること」などを挙げ、優位性の根拠としました。

ポイント3

誤③ 最先端の機械の導入が必要

正③ 自社の強みを生かした計画とそのために不可欠な投資であること

「何を買う」か、よりもまず「何をするか」が重要です。ニーズがあり、収益性が高い事業でなくては取り組む必要がありません。

一方で「なぜ、あなたの会社が行う必要があるのか?」という問いに答える必要があります。これに対して、「私たちだからこそできる」ということが必要です。それは何も業界・地域一番になることではありません。私のサポートした旋盤加工メーカーさんではある特殊な固定方法を活用した一種の加工手法を持っていたことと、導入する旋盤マシンの組み合わせが特定業界のニーズに応えるものだったため採択に至りました。

必要な利益を確保できるだけの顧客が存在すればニッチな特定のニーズに応えるだけでも十分です。

ポイント4

誤④ ある程度の業歴や企業規模がなくてはいけない

正④ 会社は小さくても応援してくれる人がいればよい

従業員が多くないと新規事業は成功しないものでしょうか?

確かに経験豊富な従業員が多いことは心強いことです。しかし、従業員ではないけれどアドバイスしてくれる存在・時間があるときに手伝ってくれる存在も思い浮かぶのではないでしょうか?代表者の友人、アドバイザー、取引先など応援してくれそうな方の顔を思い浮かべてみてはいかがでしょうか。

ポイント5

誤⑤ 採択率はコンサルタントの腕次第

正⑤ 複数の視点で「なぜ・なぜ」を問いかけていく

事業再構築補助金の審査では10~15ページの計画書による審査なので「一発勝負」です。

審査員から質問や確認が申請企業に行われたりはしません。そのため「一読して理解・納得できる」ことが重要です。

なぜこの投資が必要なのか?なぜこの取組を行うのか?なぜ他の企業に打ち勝つことができるのか?なぜ当社にはできて他の企業にはできないのか?審査員の目線に立った、「なぜなぜ」の繰り返しが重要です。これを社内で行うこともできます。

一方で、社外から新たな視点を取り入れるためには、我々中小企業診断士をはじめとする経営コンサルタントとディスカッションを行うことが重要です。最近聞く事例として1~2回のインタビューでテンプレート化されたきれいな文章を作るだけで事業再構築補助金の申請支援と称するサービスもあると聞きます。事業再構築補助金のサポートはいわゆる書類作成ではなく、事業を一緒に考えていくものということをご理解いただくことが重要です。

いかがでしょうか。2回にわたり事業再構築補助金のポイントについてお話ししました。政府の中小企業向け目玉政策ですが、うまく制度を活用して事業の成長に活用いただけたらと思います。

事業再構築補助金

著者紹介

鈴木崇史

合同会社SDGs経営サポート

大志経営コンサルティング

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